2008年12月28日日曜日

NewYork Fish

「なぜ、魚なんですか?」



「ははは、それは魚だからだよ、水から出た魚」



黒ぶちめがねに帽子、やぶれたジーンズの大男。
パーカーのフードをキュっとかぶって、
めがねの奥の小さい目はにらんでいるようにも、
不機嫌なようにも見える。
薄いまゆげ、丸鼻、分厚い唇でニカッと笑うとちょっと不気味だ。
とてもとてもアーティスト然としてない。


男の名は魚。
氷るように寒い街を、ギターを背負って泳ぐ魚に出あった。


彼の魔法の箱のようなギターから溢れる音と歌は、聞く者の魂に届く。
全然飾らないのに、世界で一番美しいメロディのように感じさせる。
大音量で鳴るスピーカーがビリビリふるえるみたいに、心が共鳴する歌。

そんな魚と、しゃべった。

しゃべっただけでなく、ライブの後、飲みに行く事になる。
芸術関係ばかりが寄り集まった魚の友達たちと、
一緒に美味しいものをいっぱい食べて飲んだ。
えびワンタン、キムチチゲにタラチリ、エイの刺身、カキの塩辛、トンチミ(水キムチ)。
行きつけらしいその店は、まるで自分の家のようにくつろげる場所だった。
店の人もみんな絵を描く人や音楽をやる人たちらしい。
隣の部屋には、やっぱりインディーバンドのミュージシャンたちが集まっていた。
食べ物の話に音楽の話、映画や美術の話をたくさんした。
魚としゃべると、相手をじっとよく見てちゃんと聞いてくれているのがよくわかり、
彼の歌と同じぐらい人間の奥行きの深さを感じる。

夜中の3時過ぎには、みんなで魚の家に移動して、
ハムサンドとチーズにワインを飲んだ。
彼の愛犬「ポッコム」は中国犬チャウチャウのオスなのだが、
ほとんど熊かライオンのようだ。20年生きるという。
魚の言うことだけはよく聞く。でかいがなんともかわいい。
名前の響きもかわいいと思った。

さんざんワインを飲んでリラックスしたあと、
お酒を飛ばすために魚がラーメンを作ってくれて、食べた。
魚のオモニが作ったキムチは最高に美味しかった。

5時半に家を出ると、外はすでに朝の空気だった。
タクシーを飛ばして下宿に帰ると、夢だったのかなんだったのか
よくわからなくなる。でも、魚の歌だけがずっと頭のなかに残っている。
次に魚にあえるのはいつだろうか。

to be continued

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