2009年10月21日水曜日

谷中マジック

10月9日金曜
芸大と地元桜木~谷中とでつくるイベント
「ぐるぐるやーみーツァー」のスタッフの打ち合わせのために
谷中を歩いていると、向こうから知っているひとがやってきた。
一緒に民俗舞踊を練習している大先輩の鈴木さんだった。
鈴木さんはなんでそんなところを歩いていたかというと、
ご自身のおどりの公演である「ヤナカヤガイ」を数日前に
控えていたのでその関係と、谷中にあるギャラリー「韋駄天」で
韓国人陶芸家のご友人が個展をやることになってそのオープニング
パーティだとかいうわけであった。なんだか奇遇だ。
しかもそのご友人がやっているのは白磁だということで
ますます面白い。ヤナカヤガイも興味深い。


10日土曜 もと体育の日。
ぐるぐるやーみーツァー本番。
谷中を少しだけ味わうことが出来たような気がする。
とにかく寺が多い。日蓮宗のお坊さんの学校の横で
ライブペインティングをする人のお手伝いをした。
彼女は昼間はポータブルLPプレイヤーでビートルズをかけていたので
のりのりだった。夕方になるとお経がヒートアップしてきて、
ほとんどサムルノリのユクチェの最後の方みたいなかんじだった。
こんどこっそり聞きに行こうとおもう。あれはエクスタシーだ。


夕日が落ちた頃に、各持ち場でアートをやっていた人々がわらわら
ひとつのお寺に集まってきて、創作盆踊りをやった。
ジャズバンドが伴奏するせつない曲だった。
ついさっきまで一緒にライブペインティングをやって撤収していた
かすみちゃんが最後に盆踊りの歌を歌った。よかったなー。


11日日曜
前々日にばったり会った鈴木さんの公演を見に行った。
お寺の境内のお墓で踊った。
あれは完全にクッだった。公演とか演奏じゃなく、儀式だった。
同じ師匠に習っている民俗舞踊が(といっても鈴木さんは大先輩だけど)
どんなふうに彼の踊りに活かされているのだろうかと
楽しみにしていったら、期待を裏切らない面白さだった。
土臭く、人間くさく、そして最後には動物になってしまう。
よかったなー。
この夜のプンムルの練習はいつにも増してノリノリでやれた。


15日
学校の授業をさぼって、
鈴木さんのお友達チェ・ジェホさんの白磁の個展を見に行った。
ギャラリー「韋駄天」は、インサドンのお茶屋さんみたいな落ち着いた雰囲気で
ここでマッコリのんだら最高でしょうね、とジェホさんに行ったら
9日(わたしが鈴木さんにばったり会った日)にみんなでそこでキムチジョンを
作ってマッコリを飲んだそうだ。がーん。誘ってほしかった。
ジェホさんの作品は、なんとも素朴なかんじの温かい白磁だった。
白磁というとピカーッと骨のように冷たい、つるつるした物体というイメージが
強かったけど、ジェホさんのは土の匂いがする白磁だった。
土は、韓国の白磁をつくるものと日本の土とを混ぜてつくるそうだ。
それから木の屑を混ぜたりするらしい。
陶芸は詳しくないので、そういうことはよくあることなのかどうか知らないが、
日本の土と韓国の土を混ぜて作っているということ自体なんだか有りがたいように思えた。
部屋の隅には韓国式の木製家具の上に、白磁で出来た小さな人形が
たくさんならべてあった。なんともかわいらしい。みんな表情が違う。
その人形はお香立てになっていた。「一日一体つくるんです」とジェホさん。
人が人らしく生きられない時代に、一日一体、人形を作っていのちを吹き込む。
いつか何千体も作って並べて展示したいと言っていた。
顔がなんともひょうきんで気に入ったので一体譲っていただいた。
まだもったいなくてお香は立てていないけれど。

広島在住のジェホさんに、今日から韓国文化院というところで
クッの写真展があるのでぜひ見に行くと良いですよ、と宣伝したところ、
ジェホさんはとてもクッに興味があるとのこと。土をこねて、
その人形を一体ずつ作ることもクッと関係があるような気がしていると言っていた。
いつかほんとうに千体ならんだところを見てみたいな。
ジェホさんとまた会う約束をしてギャラリーを出た。

出て数10メートル歩いたところで、むこうからよく知ってるおじさんが
歩いてくる。高校3年のときの担任、社会科のT先生である。

・・・谷中は本当に奇妙な町だ。

T先生は古美術商に掛け軸を売りにきたらしい。
帰りに白磁と、暇があったら韓国文化院の写真展を
ぜひ見ていかれるようにとお勧めして別れる。

後で知ったのだが、この日の夜はじめてお会いすることになる
韓国民俗芸能の大家である慶応大学の野村先生は
谷中のご出身であった。なんと不思議な。

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